唐揚げの衣~発展編~
唐揚げの衣の可能性を探りたい
唐揚げの衣について、以前基本の4種類の粉(小麦粉、片栗粉、米粉、コーンスターチ)の特徴をそれぞれ比較しました。
今回はそこから発展して、普段あまり使用しないような粉類を使って唐揚げを作ってみました。前回が唐揚げの衣〜基礎編〜だとすれば、今回は唐揚げの衣〜発展編〜でしょうか。
今回用意したのは、
- 強力粉
- 上新粉
- ホットケーキミックス
- おからパウダー
- ベーキングパウダー
- マッシュポテトの素
- すりごま
- アーモンドプードル
- きな粉
- タピオカミックス
- けずり粉
の計11種類です。いずれも名前に「粉」と付くものだったり、ある程度粒子が細かく衣として纏えそうなものなどを基準とし、家にあったものやスーパーで買えるようなものを用意しました。
作り方については前回と同じで、唐揚げ自体の味付けは醤油、酒、生姜のみ。あらかじめ漬け込んだものをそれぞれの粉と馴染ませてから揚げる作り方で調理しました。揚げ時間はいずれも180℃の油で4分です。
どの粉も意外とアリ
これだけ色々揃えてみたので一つくらいは失敗するかなと思っていたのですが、驚いたことに各々特徴はあるものの、極端に美味しくないものはありませんでした。「そういう唐揚げ」と言われれば納得してしまうくらいには唐揚げとしての枠組みにしっかり収まっていたように感じます。
それぞれの結果を「メイン使いOK↔︎サポート向き」「無難な唐揚げ↔︎クセのある唐揚げ」の2つの軸で分類してみました。
縦軸はその粉単体で衣として成立するかどうかを表しています。上半分は前回試した片栗粉などのようにそれだけでも衣として使えるもの、下半分はそれだけだとうまく衣として機能しにくかったものです。単体ではうまくいかない粉でも、他のメインとなる粉と混ぜて使ってみると食感や風味が加わって意外と面白い唐揚げになったため、メインの粉に一味加えるサポート向きな粉として分類しました。
横軸はその粉自体の持つ味や風味が唐揚げに干渉するかどうかを表しています。左のものほどクセが強く、好き嫌いも分かれてしまうかなと思います。逆に右のものはそれほど邪魔をせず、普通の唐揚げ、無難な唐揚げといったふうになりました。分けるとしたら、前回試した小麦粉・片栗粉・米粉・コーンスターチも右側に分類できますね。
それぞれの特徴
1強力粉
前回小麦粉として使用したのは薄力粉でしたが、おなじ小麦粉でも用途の異なる強力粉を使ってみました。しかし、衣の雰囲気としては薄力粉の場合と変わらず、冷めてもおいしいサクサク系の唐揚げでした。
薄力粉と強力粉の二つでは水と練った際の粘りや弾力に大きな違いがあり、それによってクッキーにしたりパンにしたりと使い分けられています。
恐らく今回は粉をまぶす形で使用し、水分が少ない状態だったため違いが出にくかったのだろうと考えられます。ある程度漬け汁を残しておき、そこに粉をもみ込んで衣にするといった調理方法だったら結果は違っていたかもしれません。小麦粉の特徴に気づけなかったとは…不覚…!
2タピオカミックス
こちらはカリカリしつつもしっとりとうまみが閉じ込められている唐揚げになりました。
タピオカはプルプルモチモチとした食感が人気でジュースやスイーツとして人気ですが、元の原料はでんぷんです。そう考えると、ほぼ片栗粉と同じような使用感が近いのかなと思います。
個人的にはこの唐揚げが今回の中では一番好みだったのですが、中々タピオカミックスが売っていないので常用は難しいですね…
3ホットケーキミックス
こちらは軽めでサクサクな唐揚げです。
中に砂糖が含まれるためほんのり甘味もありますが、下味を邪魔するわけでもなく不思議な感じです。近いものといえばアメリカンドッグの甘じょっぱ感でしょうか。ただ、砂糖の分焦げやすいのでそこだけ注意ですね。
4上新粉
ザクザク系でしっかりした食感の唐揚げになりました。
原料がどちらもうるち米なので米粉で作った時とかなり近い印象ですが、米粉が薄付きパリパリだったのに対して上新粉は厚めの衣です。そのため、冷めても食感がしっかり残っていて美味しく食べられました。
5マッシュポテトの素
こちらはお湯と混ぜるだけでマッシュポテトができるというものです。フレーク状のものだったので少し砕いて唐揚げに使用してみましたが、それでもまだ荒かったのかあまりしっかりと衣になりませんでした。食感はかなり良いので、メインの粉と合わせて使ってみるとザクザクとしたワイルドな食感に。
パン粉よりも油を吸いにくく、食べ応えはありつつもさらりと食べられる唐揚げでした。もっとジャンクな味付けでも食感のインパクトと合いそうなので、フライドチキンの衣に混ぜてみてもいいかもしれません。
6ベーキングパウダー
ベーキングパウダー単体で試したところ、完全に溶けてアワアワになってしまいました。揚げると一見普通の唐揚げになりましたが、かなり油を吸ってしまっています。
メインの粉と混ぜて作ってみると、細かなサクサク感が出てかなりいい感じです。ベーキングパウダーを使った唐揚げは他に比べてなんだかしょっぱいなと感じていましたが、原因は成分にありました。
目立つのは炭酸水素ナトリウム(重曹)…ナトリウムということはつまりは塩!!だからやけにしょっぱかったようです。お菓子作りなどで使うにしても膨らみを増すために少し加えるだけですしあまり気になりませんが、これだけたくさん使ってしまうと塩っけが目立ってしまうようです。
7アーモンドプードル
サクサクで、少し穀物の風味があります。油は吸いやすく、ホロホロしたクッキーにも近いかなと思います。
メインの粉と混ぜるとサクサクとした食感が加わり、冷めてもいい感じです。他の粉と混ぜた方が衣の安定感が増し、風味もあまり気にならなくなります。
8すりごま
ごま!!!!!!!!!!!!!というくらいごまの風味が強いです。衣としてうまく纏いにくく、肉がむきだしになってしまった所やごまの部分が焦げてしまい、ちょっと微妙な結果に。
しかしメインの粉に加えてみると、ごまの香ばしさが加わって深みのある味わいになりました。ごまの風味は意外と強いので、冷めても油っぽさが目立ちにくいのもいいですね。ごまの粒が焦げてしまいやすいので、いっそのこと下味の時点でもみ込んでおくのも美味しくなりそうです。
9おからパウダー
シャクシャクもしゃもしゃ系?ホロホロ系?な衣になりました。独特の風味があるので、好き嫌いがちょっと分かれてしまいそうです
メインの粉と混ぜると独特な風味は感じづらくサクサク系の唐揚げに。冷めると若干もしゃもしゃ感と風味が戻ってきてしまうので、揚げたてを食べるのがいいですね。
10きな粉
食感はしっとりホロホロといった感じです。おからほど風味は強くないものの、それでも大豆の香りがあるのでこちらも独特な雰囲気です。
メインの粉と混ぜると細かくて上品なサクサク感が出ます。風味はそこまで気にならず、後味にふんわり大豆っぽい香りがする程度に収まっています。冷めると若干油っぽさが目立ちます。
11けずり粉
魚つよ!!!!!!!!ごまと近い感じで、あまり衣として纏っている感じではないです。焦げやすく、香りがかなり強いので少し微妙な感じになってしまいました。
メインの粉と混ぜると魚介のうま味や香りが出るため、個人的には塩ベースの下味にしたり量を調節すればアレンジとして使ってみるのもアリだと思います。今回のけずり粉はいわし、にぼし、さばぶし、かつお節などが入っているものなので、鰹節のみのシンプルなものなら魚臭さも出てきにくいのかなと思います。
唐揚げの衣の代用として
今回試した中でメイン使いに向いていた4種は、小麦粉系(強力粉、ホットケーキミックス)とでんぷん系(タピオカミックス、上新粉)の二種類に分けることができます。しかし思い返せば、基本の唐揚げの衣も小麦粉系(薄力粉)とでんぷん系(片栗粉、米粉、コーンスターチ)の粉でした。これは裏を返せば、小麦粉系かでんぷん系の粉類であれば唐揚げの衣として活用できるということではないでしょうか…?
「唐揚げを作ろうと思っていたのに片栗粉も小麦粉も切れてしまった!雨が降っていて買いに行くのも面倒…」となってしまったシチュエーションでも、そんな時に台所に残っていたホットケーキミックスの存在に気づくことができれば、難なく唐揚げを作れることがわかりました。
唐揚げの懐は、意外と深い
今回一番驚いたのは、先にも述べたようにどれも美味しく食べられたことです。食感に変化があるのはもちろん、大豆の香りが独特なおからやきな粉も言われなければ「少し風味の変わった唐揚げだなあ」と受け入れてしまいそうな位にはアリでした。
けずり節やすりごまも今回の生姜醤油味には香りが強すぎて互いがぶつかってしまっただけで、あっさり塩味なんかの唐揚げではいい風味を出してくるのではと感じています。
鶏肉がそもそもあっさりしつつもしっかりとしたうま味を持っていますし、定番の生姜醤油味もしつこすぎずご飯のおかずとして味の主張はしっかりとする。そんな黄金コンビはどんな粉を衣にしたところで唐揚げとして受け止めてくれる、そんな懐の深さを今回実感しました。
唐揚げの底が見えなくて恐ろしいですが、今後も探っていきたいと思います。